待ち焦がれていたD-LITE (from BIGBANG)初のオリジナルアルバム『D’slove』が7月16日、ついにリリースされることとなった。
ツアー『D-LITE DLive 2014 in Japan ~D’slove~』開催記念として、6月11日に先行配信されたシングル「Rainy Rainy」(「Rainy Rainy」「醒めて、眠れ」「ウソボンダ (Try Smiling)」「ナルバキスン (Look at me, Gwisun)」) がiTunes総合トップアルバム1位、mu-moリアルタイムランキング1~4位独占するなど、彼の作品に対する期待値の高さを伺わせたが、今作には前述の4曲を含む全10曲、すべてが日本語で収録されている。
珠玉のJ-POPをカバーし、オリコンウィークリーアルバムランキング初登場2位と大ヒットを記録したソロデビューアルバム『D’scover』では、唯一無二のD-LITEの歌声の素晴らしさをたっぷりと味わうことができたが、今作『D’slove』では、歌詞の大半をD-LITE自身が手掛け、シンガーとしての類まれなる表現力のみならず、クリエイターとしての力量、才能をいかんなく発揮! もちろん前作でも見せた緻密な音へのこだわりは、今作でさらに増大し、よりストイックに音楽、そして、自分自身と向き合い、全編に渡って本格志向のD-LITEならではの高品質な音楽を堪能することができる。
「最初に “愛”をテーマにしたアルバムを作ろうと、『D’slove』とタイトルを決めて制作していきました。ちょうど2月ごろだったと思います。まず選曲からはじめていったのですが、ジャンルはあまり関係なく、僕が歌いたいと直感で感じたものを選びました」
「Rainy Rainy」と「Dress」は完全日本制作によるエクスクルーシブ作品。しかし、この2曲に出会わなければ、今作の方向性は変わっていたとD-LITEは語る。
「日本サイドからデモテープを2,30曲ずつ、それを3、4回にわけて聞かせてもらったんですけど、なかなかいいと思える楽曲と出会えなくて。これでなかったら韓国サイドの曲だけにしようかというときに、最後のリストの中にこの2曲が入っていて、聴いた瞬間、すぐに「自分の声で歌いたい!」と思ったんです」
D-LITEに鮮烈な印象を与えた2曲は偶然にも同じ日本人作家、Mitsu.Jによるもの。そこにD-LITEの感性でさまざまなフレーズが色づけされていった。
「作曲をしてくださった方と僕のカラーが合っているんじゃないかと思いました。メロディーと一緒に仮歌詞もついていたんですけど、もともとの歌詞がすごくよかったので、あえてそのラインは崩さず、そこに僕のイメージを膨らませた歌詞を書いていきました。「Rainy Rainy」は、夜に部屋の照明をひとつだけつけて薄暗い中で書いたのですが、その結果、とても切実な仕上がりになりました(※詳細は楽曲解説を参照)。でも、サウンドは、全体的に暗い雰囲気ではなく、内から湧き上がる強さや温かみを感じてもらえると思います」
「Rainy Rainy」以外にも「想い募って」や「醒めて、眠れ」でも同様につらい恋愛、悲しみにくれた主人公の心模様を綴りながらも、ダイナミックなバンド演奏をバックにD-LITEのセンシティブな歌声を轟かせ、切ない余韻を残しているに過ぎない。
「歌は約3~5分ほどの物語じゃないですか? 歌詞もメロディーも両方悲しかったら、歌いながら僕自身、めちゃくちゃ悲しい気持ちになってしまいます。もちろんそういう曲がたまにあるのはいいのですが、毎回それだけが続くと僕の心が崩壊してしまいます(笑)。だから、せめてサウンドはその悲しい気持ちを救ってあげたい、悲しみから抜け出せるようなものにしたかったんです。それに悲しみの中でもいろんな面があると思うんです。悲しいけど美しい感情とか、そこに付随するいろんな感情を楽曲全体を通して表現したかったんです」
なかでも「二人?一人!!」は、グルーヴ感満載、後半にはハンドクラップやさまざまな音色が加わり、ライブで観客と一体と化した光景を彷彿とさせる。またG-DRAGONが作詞を手掛けた「SHUT UP」でも、アコースティックギターとピアノの繊細な旋律からバンドサウンドへと高揚していく熱量、解放感を体感することができる。さらに壮大なバラード「世界が終わっても」、「Dress」のような包み込むようなハートフルなナンバーにじっくりと耳を傾け、心酔することもできる。
「僕のアルバムを聴くと、いろんなジャンルの音楽を聴くことができるんじゃないかと思います。でも、ただひとつ、今回は“ロック”っぽいもの、ちょっとでもロックの要素が感じられることが基準だったんです。ロックは僕自身が歌いながら楽しめるのがいいなと。意外に思われるかもしれないですけど、じつは僕の音楽のルーツには、ロック・ミュージックがあるんです。トロット(韓国歌謡曲)は両親の影響で自然と耳にしていたのですが、ロックは自分でイギリスとかいろんな海外のアーティストの楽曲を調べたり、ライブ映像を見たりしているうちにどんどんのめり込んでいったんです。なかでも僕がもっとも影響を受けているアーティストは、QUEEN。今もしょっちゅうライブ映像を見て、刺激を受けています」
D-LITEのソロツアーで披露している薔薇や鎖といった小道具(マイクスタンド)や大胆なマイク・パフォーマンスは、まさしくフレディ・マーキュリーを彷彿とさせ、今作でもそんなD-LITEのルーツを垣間見れる。が、前作で彼が自身の歌にもっとも重要なものとして挙げていた“温かさ”を今作でも引き続きしっかりと感じ取ることができる。 「どんなに悲しい愛を歌っても、そこに心が宿っている限り、僕の音楽には“温かみ”があります。それは、音楽を通してみなさんとひとつになりたい、共感したいという想いがあるから。レコーディングのときには、みなさんと会話しているような気分で、その瞬間を感じながら作業しました」
本格的に作詞に取り組むのは今回が初めてとなるが、「楽しみながら作業することができた」と、D-LITEは笑顔をのぞかせる。
「限られた時間の中での作業だったので、もちろん苦労や不安がなかったわけではないですが、ひとつの作品をゼロから作り上げていく工程がとにかく楽しかったです。でも、レコーディングは、もうすぐBIGBANGとしてデビューして10年になりますが、ずっと変わらず大変です(苦笑)。もともと喉が弱いし、僕の歌は少しキーが高いうえに、発音にも気を付けながら長時間歌い続けないといけないから本当に大変です。今回は一週間ぐらい毎日レコーディングをしていたので、歌録りが終わったらすぐに家に帰って、寝て……喉のケアのために、辛いものは食べないように、レコーディング2時間前から水を頻繁に飲むように心がけました。
でも、今作では自分で作詞をした曲が多かったので、僕の経験、過去の記憶を思い出しながら歌っていたら、自然と歌の世界に入り込んでしまいました。とくに歌うときに気を付けたのは、冒頭の歌い出しと最後。やはり始まりの感情と最後の感情は聴く人の一番記憶に残ると思うので、そこはもっとも意識した部分です」
1曲の中で様変わりする主人公の心の細やかな動きを、まるごと体現するかのように抒情的な歌声を奏でるD-LITE。彼の歌にはダイレクトな息遣いが感じられ、楽曲がひとつの物語としての起承転結、筋道を鮮やかにたどることができる。そして、聴き手はその情景の中に自身を投影させ、気づくとその物語の登場人物として喜怒哀楽を重複させ、心の奥に閉じ込めていた感情がポロポロとあふれ出ていることだろう。
また今回のトピックスのひとつとして、初期のD-LITEを象徴するトロット曲「ナルバキスン (Look at me, Gwisun)」(G-DRAGON作詞・作曲)の日本語詞をヒャダイン(前山田健一)氏が担当。D-LITEという人物をヒャダイン氏独自の視点でコミカルに描き、この曲の持つパワー、遊び心を増大させているのが印象的。そして、ストレートなラブソング「I LOVE YOU / D-LITE (from BIGBANG) feat. 葉加瀬太郎」で、今作が締めくくりを迎えるのも非常に興味深い。
日本ではカバー作でソロアーティストとしてのスタートを切ったD-LITE。彼はよく自身のことを「自信がない」と言っているが、1stで得た自信は確実に彼の中に蓄積され、1シンガーとして、1表現者として、確実にD-LITEが進化を遂げている姿が『D’slove』には顕著にあらわされている。そして、ソロアーティストD-LITEのさらなる未来をしっかりと感じ取ることができる。
「そう思っていただけたらうれしいです。愛の歌はこの世の中に数えきれないほどたくさんありますが、愛といっても、いろんな愛の物語があると思うんです。その一部分ではありますが、このアルバムで、僕が感じたさまざまな愛の形を描いてみました。前回のカバーアルバムでは、原曲にまつわるいろいろなかたたちの思い出がある中で、新しい僕の解釈を加えて歌い、そのぶんプレッシャーもたくさんありましたが、今回はすべてに関して僕の意見が反映されていますし、ゼロから作り上げた僕のオリジナル曲なので、作業をしながら早くみなさんに聞いてほしいという気持ちでいっぱいでした。反面、オリジナルアルバムのリリース自体初めてのことだから、前作以上にプレッシャーや心配な部分はありますが、僕の音楽を聴いて、みなさんがどのような反応をしてくださるのか、正直な意見を聞かせていただきたいです。そして、先ほども言いましたが、みなさんとこのアルバムを通して心をひとつにすることができたらうれしいです。ぜひ今後の僕の活動にも期待していただけたらと思います」
インタビュー・文 星野彩乃